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ピアノを弾くのに譜読みは必要ですか

いりません。楽譜を読まなくても、ピアノは一生弾けます。少しピアノから離れます。長いあいだ、音楽の多くは紙を通らず、口から口へ渡ってきました。邦楽の口唱歌がそれです。楽器の音を声に写して歌い、次の人へ手渡します。三味線の「チントンシャン」もその仲間です。誰の譜読みも試されないまま、流派がいくつも続きました。

昔話ではありません。同じことが、たぶんあなたの鍵盤の上でも起きています。

読まなくてもいい

「さくらさくら」なら、たぶん今すぐ弾けます。作った人の名前も残っていない日本古謡です。多くの楽譜では ラ から始まり、ラ・シ・ド・ミ・ファ の五つで足ります。都節音階といって、鍵盤のごく狭いところしか使いません。

どうしても明るくならないのは、その狭さのせいです。半音で隣り合うのは二か所だけ。シ から ド へ、ミ から ファ へ。どちらも、寄りきった先が大きく空いています。ド から ミ、ファ から ラ。寄ってから飛ぶ形が二度あるので、旋律は開かず、内側へ寄りかかったまま進みます。二小節でそれとわかるのは、そこからです。

日本で育った人なら、たいていこの曲は弾けます。そして、楽譜から覚えた記憶のある人はまずいません。耳が先に着いていた、というだけのことです。楽譜が要るのは、耳がまだ知らない曲のためです。

耳とコードだけで続けてもいい

まず、耳で探して弾く人のことを。何年も鍵盤の上で音を探してきた耳は、それ自体が相当な装備です。和音がどこか濁っていることに、理由を言えるより先に気づきます。ブルースも民謡も、そうやって渡ってきました。

コードで弾く道には、もう少し行数が要ります。弾き語りの本を開くと、五線に音符が並ぶかわりに、歌詞の上に「C」「Am」「F」と記号が置いてあります。ドレミで習ってきた人でも、ここだけは呼び方が変わり、口に出すのは「シー」「エーマイナー」です。いちいち ド や ラ に直したりはしません。記号ひとつで、押さえる音がまとめて決まります。左手はそれを置き、右手は歌のうしろを歩きます。誰かの歌の伴奏なら、たいていこれがいちばん的確な道具です。それだけで長く仕事をしているピアニストもいます。読めないから仕方なく、という話ではありません。

近ごろは、動画に次の鍵盤を見せてもらって覚える人もいます。弾きたかった曲が早く音になるので、その「いま弾けている」という手ごたえが、大人には明日もまた座る理由になります。それで弾きたい音楽に届いているなら、ここに止める言葉はありません。

あとから読み始めてもいい

それでも、譜読みだけが手渡すものがひとつあります。誰かを待たなくていい、ということです。動画は、誰かが作った曲のぶんしかありません。印刷されたページは、その曲に残ったいちばん完全な記録です。どの鍵盤か、だけではありません。いつ鳴らして、どこまで伸ばして、どこで切るか、作った人がどこまでをひと息と考えたか。そういう紙が何百年ぶん積んであります。読めるなら、今夜どれにでも手が届きます。

だから譜読みは、音楽が始まる前にくぐらなければならない関門ではなく、ふだんは誰かに開けてもらうしかない部屋の、合鍵です。鍵がなくても、部屋の音楽が消えるわけではありません。ただ、入る日を自分では決められません。

始めるなら、どこから手をつけるかは別に書きました。どれくらいかかるかも、正直なところを書いてあります。どちらも今日でなくてかまいません。

要らないと思ったなら、このページを閉じて弾きに行ってください。ここに入学試験はありませんし、ピアノが資格を確かめることもありません。ほしい曲が紙の上にしかない日が来たら、この読み方の学校はそのときもここにあります。合鍵は、それまで棚に置いたままでかまいません。


書いたのはiOSアプリNotaluneの作者です。忘れた音符ひとつで練習が止まらないように作りました。手持ちの楽譜を撮影すると、音符の上に音名が出ます。譜読みがあなたの道でないなら、Notaluneはあなたに必要のないアプリです。それはまったく正しい答えだと思います。 自信が持てないときは、推測せず空白のままにします。ひとりで読みたくなったら、ワンタップですべての音名を隠せます。ほかのガイドは学ぶにあります · ご質問はsupport@notalune.comまで。