楽譜が読めるようになるまで、どのくらいかかりますか
正直な数字はありません。「読める」が人によって別のことを指しているので、答えようがないのです。何週間で読めるようになります、と言い切るページはあります。あれでわかるのは、そのページの売り方だけです。なので、順番を逆にさせてください。距離を聞く前に、ゴールの位置を決めてほしいのです。どこまでできたら、自分は「読める」ことにしますか。ここだけは、私が代わりに決めるわけにいきません。
「どのくらいで読めるようになりますか」
聞く相手によって答えが変わるのは、ひとつの言葉が三つの別々の場所を指しているからです。音符を見て、少し考えれば名前が言える。ここまでで「読める」と言う人がいます。やさしい曲なら、楽譜を追いながら最後まで弾ける。たぶんこれがいちばん多いでしょう。それから、初めて開いたページを、その曲の速さのまま読んでいける人。教室で「あの子は読める」と言われるのは、たいていこれです。
名前が言えるところから、楽譜を追いながら弾けるところまでは、たしかに地続きです。三つめだけが違います。初めての曲を速さのまま読むというのは、別のところに立っている別の力です。そこまで行かないまま、一生ぶん楽しく弾いている人はいくらでもいます。私の周りにも何人もいます。
どこを自分のゴールにするかが決まって、やっと距離の話ができます。ところが、たいていの人が手に持っている物差しは、測りたいものとは違うものを測っています。
「バイエルが終われば読めますよね」
日本でピアノの進み具合を話すとき、最初に出てくるのは教本の番号です。進んだかどうかが、はっきりします。子どもが何年も続けられる理由の半分は、たぶんこれです。
ただ、その番号が数えているのは、弾き終えた曲の数です。読んだページの量は入っていません。同じ番号のところに、一曲を三週間かけて手に覚え込ませた子と、初めてのページをその場でだいたい読める子が、並んで座っています。物差しは二人に同じ数字を出します。
クレメンティのソナチネ ハ長調 op.36-1、その第1楽章がちょうどその場所です。速度標語は Spiritoso。冒頭は両手がそろって、ハ長調の分散和音を駆け上がります。明るくて、少しせっかちな音楽です。一ページ目に、立ち止まって考えられる場所はありません。右手が迷っているあいだも、左手は下で動き続けます。番号どおりに、ひとつも飛ばさずにここまで来た人が、二ページ目を初めて開いた晩に止まる。弾けることと読めることが別の力だと気づくのは、たいていこのあたりです。番号はここまで連れてきてくれましたが、どう読むかについては何も言っていません。
「では、何を見ていればいいですか」
期限の代わりに何を見ておくか。私が見ているのは二つです。ひとつは、練習時間の形です。土曜の午後にまとめて二時間座るより、平日の夜の十五分を五回のほうが、譜読みには効きます。長く座った日は、後半がだいたい同じ小節の弾き直しになります。私も、忙しい週のぶんを週末に取り返そうとして、うまくいったためしがありません。
もうひとつは、読んでいるあいだ自分の頭が何をしているかです。音符をひとつずつ名前に置き換えているのか、前の音からの距離で見ているのか。距離で読む話は、楽譜の読み方のページに書きました。
この二つめには、研究にも手がかりがあります。92の研究をまとめたメタ分析で、Mishra(2014)は、視奏の力が生まれつきの才能よりも練習で伸びる種類の力と最も強く結びついていることを示唆しています。157人の初心者を三年間追った McPherson(2005)は、楽譜を読むときに子どもが何を考えているかのほうが、練習時間そのものよりも進歩をよく説明した、と報告しています。どちらも大勢をまとめて測った話で、あなたの日付はどこにも出てきません。
子どものころに読んでいて、何十年か離れていた人は、話がまた別です。何が残って何が消えているのかは、大人になってからの譜読みのほうで書いています。読めるようになってから弾くものだ、と思っているなら、気にしなくて大丈夫です。読まずに弾くのはちゃんとした道で、読む力はその横で育ちます。
最後に、目印をひとつだけ置いておきます。何も調べずに、横に置いた表に目をやらずに、一曲を最初から最後まで読み通せた晩です。私のときは、弾き終えてから気づきました。その晩は来ます。それが半年後なのか三年後なのかは、教本の番号にも、私にも言えません。
書いたのはiOSアプリNotaluneの作者です。忘れた音符ひとつで練習が止まらないように作りました。手持ちの楽譜を撮影すると、音符の上に音名が出ます。期限を早めることは、私にもこのアプリにもできません。できるのは、その晩、一音でつまずいて音楽が止まってしまう、あの数分をなくすことだけです。 自信が持てないときは、推測せず空白のままにします。ひとりで読みたくなったら、ワンタップですべての音名を隠せます。ほかのガイドは学ぶにあります · ご質問はsupport@notalune.comまで。