Notalune

楽譜を読めるようになるには

譜読みは、覚える順番でほとんど決まります。まず暗闇でも見つけられる音を三つ作り、次にその隣、最後は音と音の距離で読むようにします。暗い部屋のドアを開けるとき、電気のスイッチを目で探したりはしません。ドアのすぐ内側、腰より少し上。手を伸ばせば、そこに指が当たります。明かりがついてしまえば、あとは見えます。

五線にも、それにあたる音があります。このページに、五線の音符をぜんぶ並べた表は出てきません。表が答えられるのは一度に一つの音で、曲のほうは一曲のうちに四百回たずねてくるからです。ここから書くのは順番の話です。覚える量を増やす話は出てきません。

まず三つだけ、暗闇でも押せるようにする

数えなくても名前が出てくる音を、私は三つ決めました。一つめは、ト音記号のうずまきが巻きついている線です。その線がソです。ト音記号があの渦を巻いているのは、そこを指すためです。二つめは、ヘ音記号の右にある二つの点。点は一本の線を上下から挟んでいて、その線がファです。三つめが真ん中のド。ト音記号なら五線の一本下、ヘ音記号なら五線の一本上に、短い線を一本足したところに書かれます。この短い線を加線と呼びます。上の五線と下の五線は、この音で出会います。

三つだけです。それでも最初のうちは、見つけるたびに一拍止まります。その一拍が消えていく道のりなら、音名を覚えるページを見てください。この三つが手のうちに入るまで、あとの二つの層は乗りません。

隣の音を、その三つからの距離で覚える

五線は、線と間が下から交互に並んでいるだけです。スイッチのある壁をそのまま手で伝っていけば、棚の角もドアの枠も順に出てきます。五線も同じで、目印が一つ決まれば、その上と下も決まります。ト音記号のソのすぐ上の間はラ、すぐ下の間はファ。真ん中のドの一つ上はレ。そこから一歩か二歩のところまでを、目印といっしょに覚えます。退屈な作業です。

その次からが三つめの層です。音符を一つずつ名指しするのをやめて、前の音からどれだけ離れているかを見ます。隣か、一つ飛ばしか。ときどき、手ごと運ばないと届かない跳躍が来ます。紙の上では、距離は形になって見えます。一段ずつ上がっていく形もあれば、同じ高さで足踏みしたまま進む形もあります。速く読める人が見ているのは、この形です。

はじめのうちは、距離を見るほうが名前を言うより遅くて、本当にこれでいいのかと思います。しばらくかかります。

弾きたい曲の中で読む

この三つの層は、自分が最後まで弾きたいと思っている曲の上でしか積み上がりません。

ブルクミュラーの『25の練習曲』作品100の第2番、「アラベスク」。イ短調、4分の2拍子、速度標語は Allegro scherzando です。右手の十六分音符が切れ目なく続いて、下へ転がり落ちていきます。その下から左手が、短く乾いた和音で打ち返します。速くて、少しいたずらっぽくて、どこにも腰を下ろしません。弾いていると、追いかけられている感じがします。

その書き出しの二小節を、距離で読むとこうなります。四分の二拍子で十六分音符が続けば、二小節で玉は十六個です。名前を取るのは最初の一つだけです。あとは玉の位置だけを追います。線、間、線、間。一つずつ下へずれていきます。指も、隣へ、また隣へと下ろしていくだけです。十六個の玉に、名前は一つしか使っていません。左手は短い和音の形が返ってくるので、その形を一度つかめば、あとは読み直しません。

Allegro scherzando の速さでは、玉を一つ見て、それがドなのかレなのかを決めて、それから鍵盤の上を探す。その時間がどこにもありません。下りきるまでのどこか一つでそれをやれば、そこで音楽が止まります。私はいまも左手の和音を引っかけます。それでも右手は止まりません。名前を十六回取らずに済むようになったからです。身につくまでの月日の見当は、別のページにまとめました。

この順番でやっても、一音ずつ拾って進む時期は来ます。私はそこを長く通りましたし、いま楽譜を速く読んでいる人も、みなそこを通っています。層を先に作っておけば、その時期がどこまで続くかは変わります。その時期そのものをなくす方法は、この順番にも入っていません。


書いたのはiOSアプリNotaluneの作者です。忘れた音符ひとつで練習が止まらないように作りました。手持ちの楽譜を撮影すると、音符の上に音名が出ます。迷った一小節を数秒で確かめて、そのまま先へ進む。私がNotaluneを作ったのは、そのためです。 自信が持てないときは、推測せず空白のままにします。ひとりで読みたくなったら、ワンタップですべての音名を隠せます。ほかのガイドは学ぶにあります · ご質問はsupport@notalune.comまで。