Notalune

一人で練習していて、音名が合っているかどうか確かめるには

答え合わせを、練習そのものに組み込んでしまうことです。声に出して名前を言ってから確かめ、確かめたら隠して、もう一度読む。間違った音名も、四晩続けて弾けば、正しい音名とまったく同じ強さで手に定着します。同じです。しかも固まっていくあいだ、間違っているほうに何かおかしいという手ざわりはありません。正しい音名とそっくり同じ感触で、静かに入ってきます。一人で練習するというのは、その違いを外から言ってくれる人が部屋にいないということです。

声に出して、指より先に決める

黙って読んでいると、指が目の仕事を肩代わりします。半分覚えている曲なら、名前が抜けていても手は正しい鍵に届いてしまう。だから、抜けたこと自体が表に出てきません。鍵を下ろす前に、声に出して名前を言う。名前が言えることと鍵が押せることは別のことで、声に出したときだけ、その二つが分かれます。

その差が容赦なく出るページを一つ知っています。J.S.バッハの「インヴェンション 第1番 ハ長調 BWV 772」。ハ長調で調号はありません。冒頭、右手がドから短い音型を弾き出すと、同じ小節の後半で左手がオクターブ下から同じかたちをなぞりはじめます。そこから終わりまで、二つの手は互いを追いかけ続けます。伴奏にまわる声部がありません。休んでいる手もありません。

片方の手が一音ずれると、耳に残るのは和音がにごったという感触だけです。どちらの手が外したのかも、たいてい分かりません。どちらの手も同じだけ忙しくて、隠れる場所がない。指が肩代わりする余地が、そもそもないのです。うまくいった日には、一人で弾いているのに部屋に二人いるように聞こえます。その響きのために弾く曲です。そして同じ理由で、鍵を下ろす前に名前を決めておくほかない曲でもあります。

隠して、もう一度読む

学校で赤シートを使ったはずです。緑のマーカーで塗った答えが、赤い下敷きを置いた瞬間に消える、あれです。答えは最初からそこにあります。隠せることが、あれを試験にしていました。

同じことが譜読みでもできます。名前を確かめた小節を、その場でもう一度、名前なしで読む。ただし五分後の自分はまだ答えを覚えていますから、本当の試験は明日の同じ小節です。翌日にまたすべったら、もう一度出会う番が来ていた、というだけのことで(なぜまた忘れるのか)、やることは変わりません。練習のはじめに、昨日あやしかった音を声に出す。今日の曲を開くのは、そのあとです。

答え合わせは、答えが信用できるときにしか意味を持ちません。一人のとき、手元に置けるものはそう多くありません。

私が作ったNotaluneがしているのも、この仕事です。印刷された楽譜を撮ると音符の上に音名が出て、迷ったときは空白のままにします。目のアイコンで全部の名前を隠せるので、確かめたページがそのまま試験になります。赤シートと同じ役目です。

書き込まないで、明日の自分に残す

ここだけは譲りたくないことがあります。確かめた名前を、鉛筆で楽譜に書き込まない。書いた瞬間、そのページは答えの書き込まれたページになります。明日そこを開いても、もう試験にはなりません。

赤シートは外せます。鉛筆は、消しゴムをかけても紙のどこかに残ります。名前が見えるようになるのは、同じ音に何度も出会ったあとで(音名が身につくまで)、その出会いは答えの書かれたページでは起きません。書き込みたくなったら、さっきの紙のほうに。楽譜そのものは白いままにしておきます。

いい練習だったかどうかは、一つのことでわかります。昨日より、答えを見に行く回数が少なかったかどうか。今日のほうが多かったなら、それも情報です。点数ではありません。明日どの小節から始めればいいのかを教えてくれるのは、その回数だけです。


書いたのはiOSアプリNotaluneの作者です。忘れた音符ひとつで練習が止まらないように作りました。手持ちの楽譜を撮影すると、音符の上に音名が出ます。一人で答え合わせをするなら、答える側が「ここは自信がない」と言えることが最低条件です。 自信が持てないときは、推測せず空白のままにします。ひとりで読みたくなったら、ワンタップですべての音名を隠せます。ほかのガイドは学ぶにあります · ご質問はsupport@notalune.comまで。